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満ち足りた時代に「買う理由」を作る!コーズマーケティングとは?

多くの競合の中から自社製品を選んでもらうために必要な、「選ばれる理由」。機能の拡充や価格競争といった従来の視点とはまったく異なる切り口で「選ばれる理由」を創出する、コーズマーケティングとは。

モノが足りている時代に「買う理由」「選ぶ理由」をどう作るか

技術や時代の変化により、すっかり便利な世の中になりました。日常で何か困ったことがあっても、その対策になる商品がすでにある……ということがほとんどです。たとえば、筆者はいつもお正月に親族が集まる時、スマホで集合写真を撮る役をやっています。ですが、いつもテーブルの上にスマホを固定するのに苦労していたんですよね。本などを積み上げて固定し、なんとか撮っていたのですが、どうしてもぐらぐらしてしまい……。

ところが今年、写真を撮る前にふと思いたってスマホのための三脚を探してみたところ、100円ショップでぴったりのものを見つけることができました。思った以上にしっかりと固定でき、角度調整も効いて、非常に快適に写真を取ることができました。

問題解決するための道具やサービスを作り、競合がまだ世の中になければ、困っている人に自社商品をアピールすれば買ってもらえます。しかし、すでにライバルが存在する状況では、それでは足りません。自社の商品には他社製品にはない魅力があること、たとえば独自機能や価格などの強みをアピールしなければ選んでもらえませんよね。

自社の強みが何か(どこを強みにするのか)を見定めて、それを必要とする人たち、ターゲットに届けることが必要です。買い手を絞ってしまうことにもなりますが、その絞り込みの結果抽出されたターゲットにとってはその絞り込みこそが「他社商品でなく、自社製品を選ぶ理由」になります。

ただ、非常に多くのライバルが存在する中では、他社との差別化もう簡単ではありません。いち消費者として、日常の買い物中に「どの商品を選んでも大して変わらないのでは……」と思ってしまうことも少なくないですよね。今回のテーマ、コーズマーケティングはそんな苦しい状況の中、買う理由、選ぶ理由を創出する方法のうちのひとつです。
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コーズマーケティングとは

コーズマーケティング(Cause Marketing)は、「これを買うことが社会貢献につながりますよ」とアピールし、売上げアップやブランドのイメージアップを狙うマーケティングのことです。※causeは、原因や理由といった意味を持つ言葉です。消費者に社会貢献をアピールし「自分がこの商品を買うことで世の中のプラスになるのなら、良いかな」という感情を呼び起こして、「買う理由」に転換するわけですね。

どの商品を選んでも同じなら、商品を売っている企業がどんな会社なのか、その商品を買うことで何が起こるのか、といった点も商品を選ぶ理由になります。その他の条件が同じなら、誰だってブラック労働で有名な企業の商品より、労働環境の改善など、社会に取ってプラスになる活動に取り組んでいる企業を選びたくなりますよね。

どの業界にも競合が存在し、機能や価格面での激しい競争があります。だからこそ、企業や商品に対する信頼、「◯◯を買うならあの企業のにしよう」「あの商品なら大丈夫だろう」といったプラスのブランドイメージを積み上げ、「買う理由」「選ぶ理由」を創出するブランディングへの関心も高まっています。

今回のテーマ、コーズマーケティングとブランディングは、「ブランドイメージ構築を目指す」という点で共通点を持ちますが、同じものではありません。ブランドイメージを作るための施策全般を指すのがブランディング、「商品を買うことで社会貢献につながる」というアピールを行い、ブランドイメージの構築だけでなく、直接的な売上アップも含めて目的にしているのがコーズマーケティングです。ブランディングの一部に含まれるのがコーズマーケティング、というイメージがわかりやすいかもしれません。
 

コーズマーケティングの事例

コーズマーケティングの具体的な事例としては、イオンが実施する「幸せの黄色いレシートキャンペーン」が有名です。

※参考  イオン幸せの黄色いレシート
http://www.aeonretail.jp/campaign/yellow_receipt/

黄色いレシートキャンペーンは、イオンで買い物をすると、買った金額の一部がイオンからボランティア団体への寄付金になる、という取り組みです。
 

黄色いレシートキャンペーンの流れ

(1)毎月11日のイオンデーにイオングループの店舗で買い物をすると、黄色いレシートが発行される
(2)お店内には地域のボランティア団体の名前が書いたボックスが用意されているので、自分が支援したい団体を探す
(3)その団体の名前が書いてあるボックスにレシートを入れる
(4)イオンが各ボックスに入ったレシートの合計金額を数えて、その1%を団体に寄付する

お客さんはいつもと同じく買い物をして、レシートをボックスに入れるだけです。しかし、「その金額の一部が寄付金になります」と言われれば、いつもよりちょっといいことをした気持ちになれますよね。

マーケティング4.0(自己実現)とコーズマーケティング

コーズマーケティングの仕組みから、マーケティング4.0を想起した方もいるのではないでしょうか。コトラーが提唱する最新理論、マーケティング4.0において、消費者が商品を買う理由と定義されているのは「自己実現」です。

時代の移り変わりに伴って、「買う理由」「選ぶ理由」は変化してきました。コトラーのマーケティング理論に、その変遷が具体的にまとめられています。

・生活を便利にしたい(マーケティング1.0)
・もっと自分に合ったものがほしい(マーケティング2.0)
・方針に賛同できる企業から買いたい(マーケティング3.0)

※参考 時代が変われば売り方も変わる!最新理論マーケティング4.0とは?
https://pagez.jp/blog/latest-theory-marketing-4.0.html

コーズマーケティングをコトラーのマーケティング理論にあてはめるならば、「方針に賛同できる企業から買いたい」という気持ちを「買う理由」「選ぶ理由」に転換するマーケティング3.0がもっとも近いでしょう。しかし、実際には自己実現をアピールするマーケティング4.0と重なる部分もあり、今後はこの面を押し出したコーズマーケティングも見られるかもしれませんね。

マーケティング4.0が説く「自己実現」は、「この商品を使えば理想の自分になれますよ」「理想の生活ができますよ」という理想が買う理由になる、というものです。コーズマーケティングが作る「買う理由」は社会貢献ですが、社会貢献の結果として理想の生活に近づくことや、「理想の実現を後押しする自分」になれることが買う理由に転換されるている、という解釈も可能です。

コーズマーケティングにおいて、企業が消費者のどんな理想を、どんな自分を実現するイメージを提供しているのか。今後、コーズマーケティングの事例を見かけた際には、その点を意識して見てみても、面白い発見があるかもしれません。
 

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