今回、不正があったとされるのは「運用型をはじめとする広告主向けのデジタル広告サービス」です。まずこの「広告の運用」というのが、そもそもピンと来ない、という人も少なくなさそうです。まずはデジタル広告の特徴や「デジタル広告の運用とは何か?」という点から整理していきましょう。
デジタル広告には、大きな2つの特徴があります。まず1つめは、支払いの発生方法。紙面などの従来からある広告の場合、広告が入った紙面が読者に渡れば、まず確実に支払いが発生しますよね。しかし、Web広告の場合はそうとは限りません。「広告が画面に写った」という事実でなく、広告が実際にあげた成果=クリックされた回数に応じて支払いが発生します。この点がそのまま、無駄な支払いが発生しない・成果が明確に把握できるというデジタル広告を利用するメリットです。
2つめの特徴は「広告配信がオークションになっている」という点です。運用型のオンライン広告には「いくら払えば広告配信できます」という絶対的な条件は存在しません。表示される広告は、広告枠と広告の一致具合や、広告主側で申告する「クリックされた際に払う報酬」などによって自動的に比較・検討された結果、もっとも条件の良いものに決まります。
たとえばGoogleAdWordsの場合、検索結果ページの一部や、Googleパートナーサイト(GoogleAdSenseによる広告枠を設けているサイト)が広告枠になります。
広告主は、どのようなキーワードで検索の検索結果・どのようなテーマのサイトにに広告を表示したいかや、どのような広告を配信するか、その広告がクリックされた際にいくら払うかという3点を決めてオークションに申し込んでおきます。ユーザーが検索を行なった時や、Google AdSenseの広告枠が貼られたサイトが閲覧された時、一瞬にしてオークションが開催され、一番条件の良い広告が枠を勝ち取り、表示されるという訳ですね。
(参考)Google AdWordsヘルプ
オンライン マーケティングでの AdWords を利用する
https://support.google.com/adwords/answer/6227565?hl=ja&ref_topic=6231194
このように、デジタル広告が配信されるかどうかは相対的なものです。その他の広告主との兼ね合いによって決まります。より検索にマッチした広告、成果が発生した時の支払い価格(入札価格)が高い広告があれば、自分たちの広告は配信されません。
このことから、広告主側では、広告配信のオークションに申し込んでおくだけでなく、自分の広告が実際にどのくらい表示されているのか、そしてその成果は?という点に常に気を配り、広告内容や入札価格を検討し続けることが必要となります。長くなりましたが、この部分が、広告運用と呼ばれる仕事です。
広告主に代わり、広告オークションに参加したり、状況を見て広告や入札価格を調整する運用業務を受託する場合、配信状況の報告や請求に関して(仕事の進め方によっては)不正が発生してしまう可能性があることは、ご理解をいただけたのではないでしょうか。