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"キュレーションメディア"炎上の余波(1/2)

2016年末、「読者の健康を損なう可能性のある"医療デマ"を発信していた」「著作権侵害の可能性があった」として、多数のWebメディアが閉鎖した。問題の経緯と、Web上で起こりつつある変化についてまとめる。

問題の発端

2016年10月末、DeNAが運営する医療情報系メディアWELQでモラルに欠ける記事が公開されている、との指摘がありました。

・Twitter投稿
「死にたい」で表示されるWELQの記事に対して、SEO専門家辻氏のTwitter投稿
https://twitter.com/tsuj/status/789804307293966337

問題となったのは、WELQが「死にたい」と検索する人たちに照準を合わせ、自死につながりかねない広告に誘導する記事を公開している点です。その他のWebメディア各社が検索結果に配慮するこのキーワードで利益を追求することや、その手段が問題視され、結果、多くの批判を集めることとなりました。(該当の記事は現在は非公開となっています。)

なおWELQに掲載されている記事の問題点、信憑性が疑問視されたのは、これがはじめてではありませんでした。

・Yahoo!ニュース個人
「医療情報に関わるメディアは「覚悟」を - 問われる検索結果の信頼性」
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kuchikiseiichiro/20160910-00062062/

しかし、「死にたい」との検索結果における衝撃的な事実を指摘した上記Twitter投稿を皮切りに、WELQは各種メディアで取り上げられ、問題が多くの人の目に触れることとなります。結果、肩こりの原因が幽霊であるなど、読者の健康を損なう可能性のある"医療デマ"を発信していた事実が明らかになりました。

問題の発展

その後11月29日、専門家による監修がないまま記事を公開していたとして、WELQの全記事は非公開となりました。

・DeNAプレスリリース
「当社運営のキュレーションプラットフォームについてのお知らせ」
http://dena.com/jp/press/2016/11/29/1/

リリースでは、以降、専門家による監修を行い、医学的根拠・法的な視点に沿って記事を公開していくことや、管理体制を強化していくことなどが発表されています。

しかし、問題はここで終息しませんでした。同社では"キュレーション"と称して他者のサイトコンテンツの盗用している、そして、そのような著作権侵害の責任を巧妙に回避するノウハウを組織的に推奨している、との指摘に発展していきます。

同社は、このような指摘についても、調査の結果、「モラルに反していないという考えを持つことができなかった」として、WELQを含む同社のメディア(全10個)の、全ての記事を非公開化としました。

後日、第三者調査委員会の設置による調査実施を宣言し、謝罪会見を行なっています。

・DeNAプレスリリース
「代表取締役社長兼CEO 守安功からの一連の事態に対するお詫びとご説明」
http://dena.com/jp/press/2016/12/01/1/

・Youtube
「WELQなど全10サイトを非公開に DeNAが記者会見」(動画)
https://www.youtube.com/watch?v=Uf0FNBG3Mng

問題の背景

今回の問題を受け、すっかり「キュレーション=粗悪なコンテンツ」という印象が付いてしまいましたが、本来キュレーションとは、制作者のセンスでコンテンツを取り揃え、独自の解釈を加えて紹介するという洗練されたコンテンツの作り方です。美術館の企画展やセレクトショップのラインナップのようなものです。言葉の印象の悪化を残念に思う人も少なくないでしょう。

しかし、他者のサイトから情報をピックアップして紹介するというキュレーションが時に不適切に使用されてしまうことは、今回に限ったものではありません。以前からたびたび問題視されてきました。

キュレーションは、2009年のNAVERまとめの登場以降、Web上で多く見られるようになった手法です。コンテンツマーケティングやオウンドメディアが盛り上がった2013年以降は、企業が運営するサイトでもよく利用されています。

そうしたサイトで、時に度を超した引用が行われ、もともとの著作権者と引用者の間で「盗用だ」「いや引用だ」という行き違いが発生してしまうトラブルは、以前から見かけるものでした。今回起こった著作権侵害に関する問題は、この度を越した引用がさらにエスカレートすることで起こったものと言えます。

今回記事が非公開となったメディアでは、「文章は盗用とわからない程度に書き直して使う」「画像はWeb上の情報をスクラップするサービスを介して著作権侵害の所在をぼかす」とった巧妙に責任を回避する不適切な手法が使用された、と報じられました。DeNAでは運営するすべてのキュレーションメディアの閉鎖という大規模な問題となってしまいましたが、このような手法を是としない空気が明確になったことは、コンテンツ作成者にとっては朗報です。

情報の受け手にとっても、大きな変化となるかもしれません。今回の問題を受け、多くのメディアが運営方針を検討すれば、目にする記事や検索結果が大きく変わってくる可能性もあります。DeNAの問題は収束しましたが、むしろ今後に起こる変化について、注目していきたいところです。
 

問題が他方面に与える影響

2016年12月、DeNAでは、医療サイトWELQを含む多ジャンルのキュレーションメディア、全10個を非公開とし、第三者による委員会を設置。3ヶ月をめどとして、事実関係の調査や原因追求を行い、改善を進めるとしています。

抜本的な改革や、調査結果の公開が宣言されており、Web上でコンテンツを発信する人にとっては、今後の発表も気になるものとなりそうです。

・DeNAプレスリリース
「第三者委員会の設置に関するお知らせ」
http://dena.com/jp/press/2016/12/15/1/

なお、今回の問題を受けて記事の非公開化を行なったのは、DeNAのキュレーションメディアだけではありません。サイバーエージェントやリクルートをはじめとする他社運営メディアでも、著作権侵害の可能性があるとして、記事の非公開を行なっています。

・サイバーエージェント IR掲示板
「Spotlight、キュレーションメディアについて」
https://www.cyberagent.co.jp/ir/ir_bbs_detail/id=13049

・リクルート プレスルーム
「一部サービスの非公開化のお知らせ」
http://www.recruit.jp/news_data/notification/20161209_17081.html

今回の問題をうけて、少なくとも企業にとって、正しい知識による適切な情報発信の重要性が高まり、認知されたことは間違いないでしょう。

「高品質なコンテンツ」「コンテンツ・イズ・キング」といった言葉が語られるようになってからだいぶ時間が経ちました。より多くの記事を発信すること、より多くのアクセスを集めることだけに傾倒しない、本当の意味での価値あるコンテンツを作ろう、そのために何をすべきか?という点を考える段階にやっと進むことができた、ということなのかもしれませんね。

また、今回の問題が起こった背景に関連して、メディア以外の各種サービスのあり方についても責任を追求する声が高まっています。

具体的には、著作権侵害の可能性のある記事の媒介となったとされるクラウドソーシングサービス。今回、クラウドソーシングで記事作成を受注した側からも、体制について多くの告発がありました。

また運営側でなくユーザーが記事を投稿しているため、著作権侵害の責任はユーザーにあるとするNAVERまとめなどのCGMサービスや、その根拠となるプロバイダ責任制限法についても、疑問視する声が聞こえてきています。

他種サービスへの影響については、次回記事にて取り上げていきたいと思います。

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